経費精算ペーパーレス化ガイド|領収書保存から法改正まで
経費精算のたびに、申請書や領収書の確認、手入力での仕訳や書類の保管対応など、煩雑な業務に追われている経理担当者も多いのではないでしょうか。
さらに近年は、電子帳簿保存法への対応も求められ、ますます手間が増えているのが実情です。
この記事では、そうした悩みを解消する経費精算のペーパーレス化について、実際の進め方や導入のポイント、得られるメリットをわかりやすく解説します。
スマートフォンでの領収書保存や自動仕訳、クラウド上での承認フロー構築など、経理初心者の方でも取り入れやすい方法を具体的にご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
従来の紙を使った経費精算が抱える問題
従来、経費精算は紙の申請書や領収書を使った運用が一般的でした。
特に出張や外出の多い業種では、社員数にかかわらず経費の申請件数が多くなり、処理や保管にかかる手間やコストが経理部門の大きな負担となりがちです。
こうした紙の運用には、いくつかの課題があります。ここでは、従来の紙を使った経費精算が抱える問題点を2つ紹介します。
- 紙の運用は手間とコストの両方がかかる
- 申請・承認ミスが起きやすく業務が滞る
紙の運用は手間とコストの両方がかかる
経費精算を紙で行っている場合、提出された申請書類の内容確認や仕訳処理、書類の保管まで、経理部門に多くの手作業が発生し、業務負担が大きくなります。さらに作業には時間がかかるだけでなく、印刷代・郵送代・保管場所の確保といった目に見えるコストもかかるため、問題視する企業も少なくないでしょう。
たとえば、日本赤十字社大阪府支部が運営する総合病院である大阪赤十字病院では、経費精算業務だけで、毎月35時間もの作業時間を費やしていたという事例があります(※)。
費用の面でも、従来の紙の請求書では、1通ごとの郵送費はわずかでも、年間ではまとまった負担になります。2024年10月に郵便料金が値上げされ、定形郵便物の料金は84円から110円へと大幅に引き上げられました。これにより、紙の書類を郵送するコスト負担は従来よりも確実に増加している状況です。
加えて、紙の書類は法律上7年間の保存が必要です。ファイルを保管するスペースが増えることで、オフィスの家賃や保管棚の維持費もかさみ、経費として無視できない規模になることも少なくありません。
※参考:大阪赤十字病院にて「楽楽精算」で法対応することにより年間315時間の削減に成功
申請・承認ミスが起きやすく業務が滞る
紙での経費精算では、手書きや手入力による申請ミスが起きやすく、承認までの流れがスムーズに進まないことが多くあります。
たとえば申請内容における金額のミスや内容の記載間違いにより、差し戻しや再提出が発生する場合があります。経理担当者はその対応に追われ、本来の業務に支障をきたすケースも考えられるでしょう。
さらに承認者が出張や休暇で不在だったり、紙の申請書がどこかで止まっていたりすると、経費の精算自体が遅れてしまうこともあります。
株式会社エクシーズでは、精算業務をすべて社員がExcelのフォーマットに各自で入力を行い、紙で印刷したものを総務部に回覧するフローとなっていました。経理担当者は、提出された紙ベースの書類をもとに内容確認・仕訳・振込処理・現金支給までをすべて手作業で対応しており、申請が集中した際には、精算業務に丸2日以上を要することもありました。
こうした非効率な運用は、経理担当者だけでなく、申請する社員にとっても大きな負担となっています。
経費精算をペーパーレス化するメリット
経費精算を紙ベースで運用していると、印刷や郵送、承認や保管といった作業が多く発生し、業務の負担やコストが積み重なりやすくなります。
加えて、申請ミスや承認の遅れ、書類紛失といったトラブルも起きやすく、経理部門や申請者のストレスの原因になっている企業も少なくありません。
こうした課題を解消する方法として注目されているのが、経費精算のペーパーレス化です。
紙に頼らず、システム上で経費を申請・承認・保存できるようにすることで、業務の効率化と法令対応を同時に進められます。
ここでは、経費精算をペーパーレス化することで得られる具体的なメリットを6つに分けてご紹介します。
- 紙の印刷や保管にかかるコストを削減
- 業務効率化による経理負担を軽減
- 申請・承認・精算のスピード向上
- 承認フローの可視化による進捗確認の円滑化
- 電子帳簿保存法への対応
- 書類紛失のリスク防止
紙の印刷や保管にかかるコストを削減
コストに直接かかわるのが、紙の印刷代や、精算書、領収書を保管する場所代が不要になるというメリットです。
経費精算は全従業員が行うため、一人ひとりの金額は小さくても、全体で考えると印刷する紙やインク代(トナー代)が非常に大きなものになります。
とくに営業の社員が多い場合には精算書の枚数が増えて、印刷代がかさむでしょう。また、精算書や領収書を紙で保管するためには、非常に大きなスペースが必要になります。
経費精算をペーパーレス化することで、そのスペースに支払っている場所代も削減できるのです。
業務効率化による経理負担を軽減
経費精算は、費用も手間もかかる業務として認識されているのではないでしょうか。
経営層からすると、企業の売上に直接寄与するものではないにもかかわらず、従業員が多くの時間を割かなければならず、悩みの種になっていることもしばしば。
そんな悩みを解消するのが、経費精算システムの導入です。
株式会社ラクスの独自調査によれば、経費精算システムを導入した場合には無駄な作業時間を80%ほどカットできるという試算があります。

経費精算をシステム化して作業効率を上げ、削減した業務時間で本来集中するべき会社の売上に貢献する業務に集中することで、企業の生産性の向上が可能です。
これは紙での経費精算からシステムによるペーパーレス化に移行する大きなメリットといえるでしょう。
申請・承認・精算のスピード向上
経費精算を紙で行っていると、申請書の印刷や領収書の貼り付け、承認印の押印や書類の回覧など、多くの手作業が発生します。また承認者が不在だったり書類が紛失したりすると、精算までの流れが止まってしまうことも少なくありません。
ペーパーレス化をすると、これらの物理的な手間がすべてなくなり、処理のスピードが大幅に向上します。たとえば、クラウド型経費精算システムでは、スマートフォンからでも申請や承認ができるため、外出先でもすぐに対応が可能です。
このように経費処理のスピードが上がることで、キャッシュフローの改善や社員の満足度向上にもつながります。
また、申請・承認・精算のプロセスを効率化するには、ワークフローの整備も欠かせません。
ワークフローの重要性については、以下の記事で紹介しています。
関連記事:経費精算システムでワークフローは改善できる? 導入で得られる効果
承認フローの可視化による進捗確認の円滑化
紙で経費精算を行っているときに申請者からよく出る不満として「申請の承認状況がわからない」ということがあります。
この問題もシステム化によるペーパーレス化で解決できます。経費精算システムを利用すると、自分の申請の進捗状況をシステム上で追えるので、自分の申請がどこまで承認されて、どこで止まっているのかをすぐに確認可能です。
さらに、経費精算だけでなく、社内の承認フローもシステム化することで、稟議や出張伺いなどの承認も簡単に状況確認ができます。
紙で申請を行っている場合、申請がどこまで通っているのかわからず、誰に承認の催促をしていいのかわからないという状態に陥りがちです。承認の催促にも時間がかかり、業務全体が滞るという問題が発生している企業も多いのではないでしょうか。
しかし、承認フローをペーパーレス化し、申請・承認をシステム化することでこの問題は解決します。業務のスピードアップにもつながるので、生産性の向上を果たすためにペーパーレス化は有効だといえるでしょう。
さらに、承認フローを可視化することで申請者・承認者双方の負担を減らし、業務全体の効率化につながります。
承認プロセスの見える化やスムーズな進捗管理については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
関連記事:経費精算のワークフローシステムのメリットは?複雑な業務を簡単に
電子帳簿保存法への対応
2024年1月から、電子帳簿保存法により、電子取引による請求書や領収書は、紙に印刷して保存することが認められなくなり、電子データのままで保存することが義務となりました。
ペーパーレス化を進めることで、電子帳簿保存法への対応もスムーズに行えます。たとえばクラウド型経費精算システムでは、タイムスタンプの自動付与や検索機能など、法律で求められる要件にあらかじめ対応している製品もあります。
また、いくつかの条件を満たす必要がありますが、紙の領収書もスマートフォンで撮影し、電子化して保存しておくことが可能です。これにより、紙の原本を保存する必要がなくなり、管理もぐっと楽になります。
ペーパーレス化にあたっては、まず自社の運用が法律の要件を満たしているかを確認し、必要に応じてシステム導入を検討するようにしましょう。
電子帳簿保存法への対応には、要件を正しく理解したうえでの運用が欠かせません。基本的なルールや対応方法については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:電子帳簿保存法とは?対応方法と必要なことを分かりやすく解説
参考:
電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁
適用要件【基本的事項】|国税庁
書類紛失のリスク防止
紙の申請書や領収書は、ちょっとしたミスや不注意で紛失してしまうことがあります。たとえば承認ルートの途中で書類がなくなったり、災害や保管ミスによって破損したりするリスクが考えられるでしょう。
ペーパーレス化をすると、紙でのやり取りがなくなるため、物理的な紛失リスクを大幅に減らせます。またクラウド上にデータを保管しておくことで、災害があっても情報が失われにくく、バックアップを取っておけば万が一のトラブルにも対応可能です。
さらに、書類へのアクセスはIDやパスワードで制限できるため、不正な閲覧や改ざんを防ぐこともできます。大切な経費関連の情報を安全に保管できるという意味でも、ペーパーレス化は大きな安心材料となります。
経費精算のペーパーレス化が可能な帳簿一覧と保存期間
経費精算関連の帳簿や書類は、適切なルールに従うことで、紙ではなく電子データでの保管が認められています。
ここではどの帳簿が電子化でき、どれくらいの期間保存が必要かをご紹介します。
帳簿一覧
経費精算にかかわる帳簿や書類の多くは、一定の条件を満たせば電子保存が可能です。
電子帳簿保存法では、「電子帳簿」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分に分かれており、それぞれで保存の要件が異なります。
| 電子保存の区分 | 保存要件 | 該当する書類 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | ・システムの説明書やディスプレイ等を備え付けていること ・税務職員によるデータの「ダウンロードの求め」に応じられることなど ※訂正削除履歴が残るなどの「優良な電子帳簿」の要件を満たしていると、過少申告加算税の軽減措置の適用が受けられる |
・会計ソフトで作成した仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など ・会計ソフトで作成した損益計算書、貸借対照表などの決算関係書類 ・パソコン作成の見積書、請求書、納品書、領収書など |
| スキャナ保存 | ・200dpi以上の解像度やカラー保存 ・改ざん防止措置(タイムスタンプや事務処理規程等) ・検索機能の確保など |
・取引相手から書面で受け取った書類 ・取引相手に書面で渡す書類の写し (契約書、納品書、請求書、領収書、見積書など) |
| 電子取引 | ・改ざん防止のための措置 ・保存データを確認するためのディスプレイやプリンタなどを備え付ける ・「日付、金額、取引先」の3つの要素で検索できる |
・書面でやりとりしていた場合に保存が必要な書類に相当する電子取引データ |
参考:
電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁
電子帳簿保存法|帳簿・書類のデータ保存
電子帳簿保存法| スキャナ保存
電子帳簿保存法|電子取引データの保存方法
保存期間
帳簿や証憑は、原則として7年間の保存が義務づけられており、会社の規模や業種にかかわらず、法人税法・消費税法などで定められた保存期間に従う必要があります。
| 書類の種類 | 保存期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 会計帳簿(仕訳帳・元帳など) | 原則7年 | 欠損金の繰越がある場合は最大10年 |
| 領収書・請求書・契約書などの証憑類 | 原則7年 | ・電子取引データも含む ・バスや電車などの領収書が発行されないものは、経費精算書が証憑に該当 ・出張申請書などの社内文書は、保存義務規定がないため、社内で保存期間を定められる |
| 電子取引(PDF・メール・クラウド) | 原則7年 | 2024年1月以降は電子保存が義務 |
法人では、事業年度終了日の翌日から2か月以内が原則の法人税確定申告期限となっており、この提出期限の翌日から7年間(または10年間)保存が必要です。
経費精算のペーパーレス化で必要な機能
経費精算を紙から電子に切り替えるには、単にデータで申請できる体制を整えるだけでは不十分といえるでしょう。
法律への対応や業務効率の改善まで実現するには、必要な機能がそろったシステムを導入することが重要です。
ここでは、経費精算のペーパーレス化を成功させるために備えておきたい、主な機能を5つ紹介します。
- 領収書・証憑のスキャナ保存・画像アップロード機能
- ワークフロー機能
- ファイル管理機能
- ICカード・クレカ連携機能
- タイムスタンプの付与機能
領収書・証憑のスキャナ保存・画像アップロード機能
紙の領収書や証憑を電子化するには、スキャナやスマートフォンを使って画像として取り込み、そのままデータ保存できる機能が欠かせません。
電子帳簿保存法では、「スキャナ保存」のルールとして、200dpi以上の解像度やカラー保存、タイムスタンプの付与などが求められています。
たとえば、「楽楽精算」では、AI-OCRを使って画像からデータを読み取り、手入力の手間を減らす機能があります。
AI-OCRとは、AIを活用した光学的文字認識技術であり、画像から文字を読み取りデータ化するものです。
外出先からでも領収書を即時に登録できるこの機能は、ペーパーレス化の出発点といえるでしょう。
なお、スキャナ保存の具体的なルールや対応方法や実務で役立つ情報は、以下の記事で詳しく紹介されています。
関連記事:
領収書のスキャナ保存で原本を破棄できる?電子帳簿保存法上の注意点
領収書の長期保存や管理をラクにする!?順不同でも画像でもOKな保管方法
ワークフロー機能
ワークフロー機能とは、経費の申請から承認までの流れを自動化・システム化する機能です。
従来の紙の稟議書では、誰に回すべきか迷ったり、承認印がもらえなかったりする問題がありました。
ワークフロー機能を備えた経費精算システムでは、申請金額や所属部署に応じた承認ルートを自動で設定することができます。承認者には自動で通知が届くため、確認や承認の漏れを防ぎ、業務のスピードと精度を高めることが可能です。
さらに、紙の書類を使用せずに、申請から承認までを完結できるため、ペーパーレス化の推進にもつながります。
ファイル管理機能
ペーパーレス化した帳票や証憑は、単に保存するだけでは不十分です。電子帳簿保存法では、日付・金額・取引先といった条件で検索できることが義務づけられており、「いつ・いくら・誰と」の情報からすぐにデータを探し出せる検索性が求められます。
そのため、ペーパーレス化を進めるには、十分なファイル管理機能を備えたシステムの導入が不可欠です。
クラウド型の経費精算システムでは、証憑の保管だけでなく、検索・抽出・アクセス管理も簡単に行えるのが特徴です。さらに、電子帳簿保存法の要件に対応した検索機能が標準搭載されているシステムも多いため、安心して法令に対応できます。
また、クラウド上にデータを保存しておけば、万が一の災害時でも安全にデータを守れる点もメリットの1つです。
ICカード・クレカ連携機能
交通費や出張費の入力は、ミスが起きやすく手間もかかります。こうした作業を自動化するのが、交通系ICカードや法人クレジットカードとの連携機能です。
たとえば、SuicaやPASMOなどのICカードと連携させれば、利用履歴をそのまま経費申請に反映できます。
同様に法人クレジットカードの明細データも自動で取り込めば、手入力の負担を大幅に減らすことが可能です。
交通系ICカードとの連携方法や、実際の活用例については以下の記事で詳しく解説されています。ICカードの導入を検討している方は、あわせてチェックしてみてください。
関連記事:Suica®やPASMO®で経費精算が楽に!ICカードによる交通費精算のポイント
タイムスタンプの付与機能
電子帳簿保存法では、スキャナ保存や電子取引データの保存時に改ざんされていないことを証明するために、真実性の確保が必要です。
その方法のひとつがタイムスタンプの付与です。
タイムスタンプとは、「このデータは〇年〇月〇日にたしかに存在していた」という記録を残す技術であり、保存した証憑に対して一定期間内に付与する必要があります。
また、訂正や削除の履歴が残る仕組みを利用することでも、タイムスタンプの代替になるケースがあります。
タイムスタンプの仕組みや電子帳簿保存法での具体的な要件については、以下の記事も参考になりますので、タイムスタンプの扱いに不安がある方は、確認してみてください。
関連記事:
タイムスタンプの役割は?基本的な仕組みや電子帳簿保存法での利用法
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの目的と役割|2022年改正の変更点
経費精算をペーパーレス化する方法
経費精算をペーパーレス化するメリットをご紹介しましたが、実際にペーパーレス化するためには何をすればよいのか、以下で具体的な2つの方法をご紹介します。
- 経費精算システムの導入
- 電子帳簿保存法への対応
経費精算システムの導入
経費精算のペーパーレス化に有効なのが、経費精算システムの導入です。このシステムを使えば、経費精算に必要な作業のほとんどをシステム上で行えます。
たとえば、交通系ICカードの履歴をシステム上で読み込めたり、クレジットカードなどの利用明細から申請データを作成したりすることも可能です。
クラウド型の経費精算システムなら申請書が不要になり、インターネット環境があればどこからでも申請できるため、精算業務のスピードが向上します。
電子帳簿保存法への対応
経費精算のペーパーレス化を検討する際には、電子帳簿保存法への対応も欠かせません。市販されている多くの経費精算システムは、すでに同法に準拠した機能を備えています。
一方で、自社で独自にシステムを開発したり、開発会社にシステム構築を依頼したりしている場合は、電子帳簿保存法の保存要件に確実に対応できる設計にする必要があります。
対応のポイントとしては、タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の管理、検索性の確保などが挙げられますが、細かな要件をすべて網羅するのは簡単ではありません。
そうした場合には、JIIMA認証(日本文書情報マネジメント協会)を取得している製品を選定の基準にするのも一つの方法です。認証済みのシステムであれば、法令への適合性の目安として安心材料になるでしょう。
なお、電子帳簿保存法の基本や対応のポイントについては、以下の記事も参考にしてみてください。
経費精算のペーパーレス化を成功させる4つのポイント
経費精算をペーパーレスに切り替えるには、システムを導入するだけではうまくいきません。
実際には、業務の流れを見直したり、社員がスムーズに使えるような工夫をしたりするなど、いくつかのポイントを押さえることが大切です。
ここでは、ペーパーレス化を社内に根付かせて、効率化や法対応の効果をしっかり実感するために、知っておきたい4つのポイントをご紹介します。
- スモールスタートで段階的に社内へ浸透させる
- 自社に見合った機能のシステムを選択する
- 補助金活用で導入コストを抑える
- 教育・サポート体制を構築する
スモールスタートで段階的に社内へ浸透させる
経費精算のペーパーレス化は、いきなり全社へ一斉導入するよりも、まずは小さくはじめて徐々に広げていく方がスムーズです。
たとえば、経理部門や一部の部署で試験的に導入してみることで、実際に運用してはじめて気がつく課題もあるでしょう。
小規模な導入を経て、ルールや運用方法を整えてから全社展開することで、現場の混乱も最小限に抑えられます。
また最初からすべての機能を使うのではなく、必要に応じて少しずつ機能を追加していくと、従業員の負担も軽減でき、自然に定着していきやすくなります。
企業規模や機能が適したシステムを選択する
ペーパーレス化を成功させるには、自社の業務内容や規模に合ったシステムを選ぶことが大切です。システムには、操作がシンプルなものから、複雑な承認フローや部門別管理に対応できる高機能なタイプまで、さまざまな種類があります。
たとえば、少人数での運用を前提とするなら、基本機能だけで十分な場合もあります。一方で多くの部署や承認ルートが絡む企業では、柔軟にカスタマイズできる機能や、他システムとの連携性が重要になってきます。
将来的に業務拡大を見込んでいるなら、あとから機能を追加できる拡張性の有無も確認しておきましょう。
価格や知名度だけを理由にシステムを選んでしまうと、機能が自社に適しておらず、業務がかえって非効率になることもあります。システムを選ぶ前に、たとえば以下のような点を整理しておくと検討がしやすくなります。
- 従業員数・部署数
- 月あたりの経費申請件数
- 承認ルートの複雑さ
- 現在使っている会計や勤怠システムとの連携
- 今後の業務拡大の予定
自社の実情に合ったツールを選ぶことが、無理なくペーパーレス化を進める第一歩です。
補助金活用で導入コストを抑える
システム導入には費用がかかりますが、国や自治体の補助制度を活用すれば、コストを抑えて導入が可能です。
たとえば「IT導入補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などは、経費精算システムの導入費用が対象になることがあります。
こうした補助金制度は、年度によって内容が変わるため、事前に中小企業庁などの公式サイトで最新情報をチェックするのがおすすめです。
導入を検討する段階から情報を集めておくことで、スムーズに申請準備ができるでしょう。
参考:
IT導入補助金2025
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>
教育・サポート体制を構築する
新しいシステムを使いはじめると、最初は操作に戸惑ったり、不安を感じたりする従業員も少なくありません。だからこそ、事前の準備や導入後のフォローが非常に重要です。
たとえば、操作マニュアルを用意したり、研修を段階的に行ったり、ヘルプデスクを設けて質問にすぐ対応できる体制を整えたりしておくと安心です。
導入後も定期的に利用状況をチェックし、必要に応じて研修を追加したり、運用ルールを見直したりすることで、システムが自然と職場に根づいていくでしょう。
経費精算をペーパーレス化するうえでの4つの注意点
経費精算をペーパーレス化することで、業務効率が上がる、コストを抑えられる…といった多くのメリットが得られます。
ただし、導入や運用にあたっては慎重な対応が必要です。
たとえば、データの安全性や法令への対応、運用後の社内サポートなど、見落としがちなポイントをしっかり押さえておかないと、かえって混乱を招くことにもなりかねません。
ここでは、ペーパーレス化をうまく定着させるために意識しておきたい4つの注意点をご紹介します。
- バックアップ体制やセキュリティ対策の強化
- 導入コストの把握
- 電子帳簿保存法の保存要件を満たす
- 操作マニュアルやFAQの準備
バックアップ体制やセキュリティ対策の強化
経費精算をデジタル化すると、情報の管理はすべて電子データが中心になります。便利な反面、サイバー攻撃やシステムトラブルによるデータ消失・流出といった新たなリスクも考慮しなければなりません。
経費データには、従業員の個人情報や企業の取引先情報など、重要なデータが含まれているため、情報が漏れてしまうと企業の信頼にもかかわります。
以下で、有効な対策の一例をご紹介します。
- ファイアウォールやウイルス対策ソフトの導入
- 通信の暗号化、多要素認証の設定
- 定期的なバックアップ
- 災害時に備えたクラウド保存やリカバリー体制の整備
万が一のトラブル時にも安心して対応できるように、ペーパーレス化を検討する際は、バックアップ体制やセキュリティ対策もあわせて検討しましょう。
導入コストの把握
ペーパーレス化は、システムを導入して終わりではありません。初期導入費用に加えて、運用後もライセンス料・保守費・研修費など、さまざまなコストがかかります。
また、既存システムとの連携やデータ移行、カスタマイズが必要になるケースもあり、想定以上に費用が膨らむこともあります。
そのため、導入前の段階で「どこに・いくらかかるか」を丁寧に洗い出しておくことが大切です。
投資効果の観点からも、事前に費用対効果を確認しておきましょう。
導入コストを正しく把握するには、具体的な料金体系を知ることが第一歩です。費用感を知りたい方は、以下より資料をご請求いただき、導入を検討する際にご活用ください。
電子帳簿保存法の保存要件を満たす
システムを選ぶ際は、電子帳簿保存法に対応しているかどうかを事前に確認するようにしましょう。
2024年からは、電子取引の請求書や領収書を紙で保存することが認められず、データのまま保存することが義務化されました。
たとえば、スキャナ保存を行う場合は、カラーでの読み取りや一定以上の解像度、タイムスタンプの付与、検索機能の確保など細かい条件を満たす必要があります。
こうした保存要件を満たさない場合、税務上のペナルティを受ける可能性もあるので、注意が必要です。
とくに、国税庁が紹介している「JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)」の認証を受けたシステムであれば、要件を満たしているかどうかのひとつの判断基準になります。
操作マニュアルやFAQの準備
どれだけ便利なシステムでも、現場で適切に使われなければ意味がありません。とくに、はじめて使う従業員にとっては、新しい仕組みに不安や戸惑いを感じることもあるでしょう。
導入前から、操作マニュアルやFAQを整備しておくことで、スムーズに運用をスタートできます。申請者・承認者・管理者など立場に応じた研修プログラムを用意しておくのも効果的です。
さらに導入後のサポート体制も重要です。社内に管理者となる人材を育成し、問い合わせに対応できるようにしておくと、日常的な不安やトラブルにも柔軟に対応できます。
サポートの仕組みを整えることで、社内での定着率が高まり、長期的な運用もうまく進められるようになります。
経費精算のペーパーレス化による成功事例
近年、経費精算をデジタル化し、業務の効率化やコスト削減を実現している企業が増えています。
経費精算システムは多くの企業から提供されていますが、ここでは一例として、クラウド型経費精算システム『楽楽精算』を導入した企業の事例をご紹介します。
- 株式会社アイレックス|業務負担が半減
- 井村屋グループ株式会社|段階的な改革で生産性向上
- サンスターグループ|紙伝票廃止で工数削減
株式会社マーブル|業務負担が半減
2024年10月1日に株式会社マーブルと合併した、ソフトウェアサービスを提供する株式会社アイレックスでは、手作業による経費精算が経理担当者の大きな負担となっていました。
たとえば、経費申請に関する書類は領収書も含めると約900枚ほどあり、PDFで申請されたものは紙に印刷して保管、その後に届いた原本を差し替えるなど、二度手間が当たり前となっていました。
さらにデータ上での申請ができなかったため、経費申請者は申請のたびに出社が必要であり、そして上職者が不在だと印鑑がもらえないことから、承認が滞る点が課題でもありました。
そこで経理担当者と申請者、両方の業務効率化を図るために導入を検討したのが、「楽楽精算」です。
「楽楽精算」の導入後は、経費計算に要する時間が2分の1に短縮され、紙で900枚もあった書類は40枚まで削減されました。
さらに、交通系ICデータや乗換案内サービスとの連携により、正確な金額が自動で読み込まれるようになったことで、交通費精算に関する業務の短縮も実現。結果的に、業務にかかる時間が従来の約半分にまで減少しています。
詳細記事:「楽楽精算」で経費精算業務に要する時間が2分の1に!900枚→40枚の書類削減でペーパーレス化も実現!|「楽楽精算」
井村屋グループ株式会社|段階的な改革で生産性向上
肉まんやあずきバーで知られる食品メーカー、井村屋グループ株式会社では、出張申請と精算のみシステムを活用し、その他の経費精算は手書きの経費精算書を回して、現金精算を行っていました。
しかし、精算までの工数が多かったり、担当者不在により精算完了までに時間がかかったりする点が、課題となっていました。
当時はまだペーパーレス化へのハードルが高かったので、まずは第一段階として現金出納をなくすために経費精算システムの導入を検討。その中で選ばれたのが「楽楽精算」でした。
結果、全体的な精算処理のスピード向上により、コア業務にかけられる時間を創出。生産性の向上につながりました。
現場の社員からも、紙に領収書を貼る手間がなくなったと、効率化を喜ぶ声が挙がっています。
詳細記事:「楽楽精算」を導入したことでペーパーレス化へと段階的に改革した事例|「楽楽精算」
サンスターグループ|紙伝票廃止で工数削減
オーラルケアやヘルスケア分野で世界展開するサンスターグループでは、働き方改革やシステム技術高度化による変化、コロナ禍によるテレワークへの早急な対応が求められたことをきっかけに、経費精算システムの導入を検討しました。
当時、領収書は紙で添付する運用だったことに加え、経費精算に関するルールが細かく定められていたことにより、経理担当者の負担が大きいのが課題でした。
楽楽精算を導入した結果、経費精算にかかっていた工数を大幅に削減できただけでなく、システムにあらかじめ申請ルールを細かく設定したことで、誤った伝票の申請が減る結果となっています。
システム変更当初は、一時的に操作方法などの問い合わせが増えましたが、2か月ほどでなくなり、現在では「とても楽になった」という喜びの声が挙がっています。
経費精算のペーパーレス化なら低価格で利用できる「楽楽精算」
経費精算をペーパーレス化したいけれど、導入コストが高そう、運用が難しそうといった不安を感じていませんか?
そのようなお悩みに応えるのが、クラウド型経費精算システムの「楽楽精算」です。
楽楽精算は、必要な機能を無駄なく備えたシンプルな設計で、低コストから導入が可能です。初期費用や月額料金も明確で、予算に限りのある中小企業でも導入しやすい料金体系となっています。
また電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しており、スキャナ保存・データ連携・申請フローの自動化など、ペーパーレス化に必要な機能をしっかりカバーできるのが特徴です。
楽楽精算なら従業員の入力負担を減らしながら、経理業務全体の効率化を実現できます。さらに、導入前後のサポート体制も充実しており、初めてのペーパーレス化でも安心です。
詳しい料金を知りたい方は、以下より資料をダウンロードできます。
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