通勤手当は課税?非課税?非課税限度額や経理処理におけるポイント

「通勤手当」とは、従業員の自宅から勤務先までの通勤費用を補助する目的で毎月支給する手当のことで、業務上で必要な移動にかかる経費である「交通費」とは区別されます。給与計算で通勤手当を扱う場合は、課税・非課税のルールに則って正確に経理処理を行いましょう。
この記事では、通勤交通費の取り扱いでお悩みの経理担当者の方へ向けて、通勤手当が所得税の課税・非課税どちらに該当するのか、基礎知識を解説します。
この記事の目次
通勤手当は所得税の課税対象?
初めに、通勤手当が所得税の課税対象・非課税対象のどちらとなるのか、ケースに応じて解説します。改めて通勤交通費と税金に関する基礎知識を確認してみましょう。
非課税限度額内であれば非課税
通勤手当は一定の限度額内であれば非課税の取り扱いとなります。非課税限度額の定め方は通勤方法によって異なる点に留意しましょう。具体的には「電車やバスなどの公共交通機関を利用するケース」と「自家用車(マイカー)や自転車を利用するケース」で違いがあります。詳しくは後の見出しで解説します。
限度額を超えたら課税
通勤手当が前述した非課税限度額を超えている場合は、上限を超えた分の金額が課税対象となります。その際、上限を超えた分の金額は「給与所得」の取り扱いとなり、「所得税」が課税される点を押さえておきましょう。
参考:国税庁「No.2508 給与所得となるもの」
<補足>社会保険料の計算には通勤手当が含まれるため注意
社会保険料は、通勤手当の全額を含めて算出する必要があります。所得税に関しては、限度額内であれば非課税となりますが、社会保険料に関しては、非課税限度額に関係なく、通勤手当を全額含めて計算することに注意しておきましょう。
参考:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?」
通勤手当の非課税限度額
以下の表は、通勤手当の非課税限度額の条件をまとめたものです。ここでは、具体的な交通費精算のケース別に通勤手当の非課税限度額について解説します。
【通勤手当の非課税限度額】
区分 | 非課税限度額(平成28年1月1日以降適用) | |
---|---|---|
1.交通機関または有料道路を利用している人に支給する通勤手当 | 1カ月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円) | |
2.自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当 | 片道55キロメートル以上 | 31,600円 |
片道45キロメートル以上55キロメートル未満 | 28,000円 | |
片道35キロメートル以上45キロメートル未満 | 24,400円 | |
片道25キロメートル以上35キロメートル未満 | 18,700円 | |
片道15キロメートル以上25キロメートル未満 | 12,900円 | |
片道10キロメートル以上15キロメートル未満 | 7,100円 | |
片道2キロメートル以上10キロメートル未満 | 4,200円 | |
片道2キロメートル未満 | 全額課税 | |
3.交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券 | 1カ月当たりの合理的な運賃等の額(最高限度150,000円) | |
4.交通機関または有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券 | 1カ月当たりの合理的な運賃等の額と2の金額との合計額(最高限度150,000円) |
出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
公共交通機関(電車やバスなど)で通勤する場合
電車やバスなどの公共交通機関で通勤する場合は、1カ月あたり15万円までが非課税となります。その際は、運賃・所要時間・距離などを比較して、最も経済的かつ合理的な通勤手段・通勤経路を選択しなければなりません。
なお、公共交通機関の定期券代を支給する場合も、同様に1カ月15万円までが限度額です。
<補足>3カ月・6カ月などまとめて定期券を購入する場合は?
企業によっては、通勤手当として3カ月分・6カ月分の定期代をまとめて支給することもあるでしょう。その場合、たとえ数カ月分の定期代の総額が15万円を超えたとしても、1カ月あたりの金額が15万円を超えていなければ、非課税の取り扱いとなります。一方、1カ月あたりの金額が15万円を超えた場合は、上限を超えた分の金額が課税対象となることを押さえておきましょう。
自家用車(マイカー)やバイク、自転車で通勤する場合
自家用車・バイク・自転車で通勤する場合は、片道の通勤距離に応じて1カ月あたりの非課税限度額が定められています。乗り物が自動車であっても自転車であっても、非課税限度額は同額です。例えば、片道15kmの車通勤をしている従業員に通勤手当を20,000円支給しているとします。非課税限度額は、片道15キロメートル以上25キロメートル未満の場合で12,900円です。そのため、超過分の7,100円が課税対象となります。
<補足>自動車やバイクでの通勤はガソリン代を基に算出することが多い
自動車やバイクで通勤する従業員に対しては、1kmあたりのガソリン代をあらかじめ設定しておき、通勤の走行距離と出勤日数を乗じて通勤手当を算出する方法が一般的です。このほかに、通勤の走行距離と従業員が使用する車の燃費からガソリン代を算出する方法もあります。
公共交通機関と自家用車(マイカー)・自転車を併用して通勤する場合
公共交通機関と自家用車・バイク・自転車を併用して通勤する場合は、「1カ月あたりの最も経済的かつ合理的な公共交通機関の運賃」と「自動車や自転車での通勤距離に応じた非課税限度額」の合計金額であれば、非課税の取り扱いとなります。なお、最高限度額は両者を合わせて1カ月あたり15万円です。
通勤手当の課税・非課税をスムーズに処理するためのポイント
日々の経理業務では、通勤手当の申請に関して判断に悩むことが少なからずあるでしょう。経理担当者が通勤手当の課税・非課税をスムーズに処理するためのポイントをご紹介します。
通勤手当の支給要件を明確に設定しておく
まずは、通勤手当の支給要件・支給金額の計算方法・通勤手当の申請方法などを社内規定で明確にしておくことが大切です。通勤手当の支給要件が定まっていないと、経理担当者が支給の可否を判断しにくくなってしまいます。また、支給額に上限を定めなければ企業側の負担が大きくなる点にも注意が必要です。
なお、近年ではテレワーク(在宅勤務)で勤務する場合は出勤日数に応じて通勤手当を計算するといったように、自社の働き方に適した通勤手当の支給方法を採用する企業も多くなっています。
合理的な通勤方法・金額かの確認を必ず行う
支給対象者から通勤手当の申請を受けたときは、「通勤経路や交通手段が合理的であるか」「通勤手当の金額が非課税限度額を超えていないか」などの観点でチェックをしてください。経理担当者は交通費の不正受給やトラブルの防止に努める必要があります。
一般的に合理的と見なされない交通手段の例として、JRのグリーン車のような、座席クラスの高い車両での通勤が挙げられます。ただし、この場合も身体的な事情などで乗車の必要性があると認められれば、通勤手当の支給対象となる可能性があります。
通勤手当の課税・非課税は正確に処理しましょう!
ここまで、通勤手当が所得税の課税・非課税どちらに該当するのか、基礎知識を解説しました。通勤手当は一定額内であれば非課税となります。このように業務で発生するさまざまな経費精算に負担を感じている経理担当者の方も多いでしょう。
日々の経理業務で仕訳ミスの防止や通勤手当計算の効率化を実現するなら、専用の経費精算システムを活用する方法がおすすめです。
数あるシステムの中でも、クラウド型経費精算システム「楽楽精算」には交通費計算をラクにする便利な機能が搭載されています。
便利機能1:定期区間の自動控除
事前に従業員ごとの定期区間を登録しておき自動で控除を行う機能です。「定期区間控除済み」のアイコンが表示されるので、利用ルートと定期区間の照合が不要で、承認者・経理担当者のチェック作業を効率化できます。 本機能の詳細はこちらをご覧ください。
便利機能2:規定違反チェック
社内規定に違反する経費申請を自動でチェックし、警告表示やブロックを行う機能です。申請内容の不備を防止することで、承認者・経理担当者が差し戻しに対応する無駄な手間をなくせます。
本機能の詳細はこちらをご覧ください。
便利機能3:汎用ワークフロー
現状の交通費精算のフローに合わせて、申請業務をシステム化する機能です。既存の交通費申請書をシステム上で再現したり、承認の流れを設定したりして、自社独自のフローを自由に組み立てられます。
本機能の詳細はこちらをご覧ください。
「楽楽精算」の機能や導入メリットは、資料で詳しくご案内しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。
「楽楽精算」の
資料をメールでもらう

電子帳簿保存法対応!経費精算システム「楽楽精算」の製品概要や導入メリット、機能などが詳しくわかる資料をメールでお送りします。
この記事を読んだ方におすすめ!
オススメの人気記事
記事執筆者紹介

「楽楽精算」コラム編集部です。
経理担当者様の日々の業務にプラスとなるお役立ち情報
「楽楽精算」最新情報をお届けしていきます!
使い勝手が気になる方へ。

